吉田良活動日誌

R7.1.6 2025街頭活動スタート

平成27年6月に始めた名取駅前での街頭活動も、間もなく丸10年となります。

マイクを使わず黄色いメガホンを使って肉声でお話しするスタイルをこれまで貫いてきました。

基本的に選挙カーの連呼行為は害悪だという認識を持っていますので、大都会はともかく名取駅のような静かな住宅地でマイクを使う活動は、私の活動の選択肢にはありませんでした。

声楽を学ぶ中で発声法を身につけてきたというのもありますが、日々の肉声での街頭演説の実践により、環境が整えば余裕で1キロ先まで声を飛ばすことができます。

声が出るうちは、このスタイルを続けていきたいと考えています。

さて、新年最初の街頭演説では、この正月に再読したある書籍のことを紹介しました。

都立駒込病院の脳神経外科医、篠浦伸禎先生による『人に向かわず天に向かえ』(小学館101新書)です。

奥付を見ると2009年2月の初版となっており、30歳で始めた学習塾の経営が最も苦しいときに出会った本であったことが思い出されます。

「人に向かわず天に向かえ」とは、西郷隆盛が遺した言葉「人を相手にせず、天を相手にせよ」をアレンジしたものと思われます。

脳神経外科医としての医療行為において、脳の機能に変調を来した患者に人間学の書物を薦めたところ、それを読んだ患者は症状の改善が見られたことから、現代社会が生み出す様々なストレスに悩まされる多くの人にとって、人間学が手助けになるとの仮説を打ち立てた、衝撃と合点の感情が一度に押し寄せるような読書体験だったことを思い出します。

残念ながら、本書は名取市図書館はおろか仙台市立図書館にも収められておらず、実物を手にするのは少々難儀ですので、ごく簡潔に要旨を紹介します。

まずは人間の脳の構造から説明が始まります。

生物の基本的な生命活動を司る脳幹、知覚と運動機能を司る小脳、言語や感情などを司る大脳に大別され、大脳は、情動や本能に関係する大脳辺縁系と、人間として高次の働きを司る大脳新皮質に分けられるとされます。

そして、右脳と左脳の働きの特色に触れ、さらには大脳新皮質を人間脳、大脳辺縁系を動物脳と位置づけ、現代社会におけるさまざまなストレスによって、それらの働きにアンバランスが生じていることを指摘します。

そのアンバランスを解消し、よりよい状態へと回復させるために「公」や「志」を重視する人間学が有効であることを医学的な視点から明らかにしたのです。

ここからは私の解釈になります。

本書が刊行された2009年当時から、著者は動物脳の暴走に警鐘を鳴らしていましたが、まさに今アメリカをはじめ先進国で起きている人間社会に分断は、動物脳の作用の比重による対立の構図と大きく捉えることができるのではないかと思います。

人間は、自らの生存を守るための動物脳を完全に手放すことはできません。

動物脳は人間脳によってコントロールしなければなりませんし、それは困難なことではないのです。

しかし動物脳が暴走してしまうと、自らの幸せな生き方を手放すことが余儀なくされ、そういう人が多数派となれば、人間社会全体が弱肉強食に回帰することで、これまで築かれてきた人類の富と繁栄は瓦解するとになります。

他人の動物脳を操るのは、テクニックさえ踏まえれば可能です。

特定の属性(人種、民族、ジェンダー、身分等)があなたの生存を脅かしているとして不安や恐怖をあおれば、その特定の属性への攻撃という行動を起こさせるとともに、自分を守ってくれる権力者に対してひれ伏す行動を導くことができます。

まさにナチスの手法そのものですが、現代社会はSNS等の情報技術の発展により、個人がこの手法をとることが容易にできてしまうことが深刻な病理と言えます。

さらにやっかいなのは、動物脳をくすぐることで大衆を扇動し、それを収益につなげられる仕組みが構築されていることです。

ある影響力のある日本人の政治系youtuberは「馬鹿は犬や猫と同じ。そんな馬鹿を選挙でどううまく利用するか」と発言したそうですが、動物脳の操り方を熟知した狡猾さがにじみ出ています。

篠浦先生は2009年の時点で、動物脳が人間脳に勝ることによる個人と社会の双方の弊害を看破しました。

SNSはとても役に立つ反面、人間社会に大きなダメージを与えるリスクを兼ね備えています。

動物脳の暴走を抑えて様々な難題の解決に着実に取り組むのか、動物脳を暴走させて難題とともに社会そのものまで吹き飛ばしてしてしまうのか、令和7年(2025年)は日本人だけでなく人類にとっての分岐点に当たるような気がします。

心を落ち着かせて、人間学に学んでいきたいと思います。

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